"戦後"
――最初に崩折れたのは、黒武者の方だった。
その場にいた全員が息を切らしている。
『戦場帰りの亡霊』――異能も持つその相手を絡め取るには、多大な労力がかかった。
「ここまで、来たら――」
ジリ、と熱がこもる感覚がする。
「! 自爆か……!」
「こんにゃろ……! まだ死ぬ気なんかい!」
鷹奈部・庸一は鳶沢・ギンコを後ろに控えさせて、武器を構えた。
最大火力の気配を感じて、クリスティア・レインベルグも警戒のため盾を手に総員の前に立つ。
ここでトドメを刺すべきか――江田島・榛名は遠巻きにスコープを覗く。しかし、撃つことを止めた。
落とし穴から這い上がったその男は、そこで力尽きると――倒れ込んだ。
「――捕縛であります!」
すぐさまに解かれた蒸気包囲網の中、ハラナキが先陣を切って捕縛のための手錠と、次いでに匙・当適が異能の封印の術を施した器具を腕に取り付ける。
「これで無力化だ! ……他の『四天王』が来る前に、さっさと連れ出すよー!」
匙の言葉と共にその場の全員は頷き、力を喪った黒武者・徹を連れ出したのであった。
●
「――死にぞこなった」
「へんなのだー。『生きられた』がセーカイだと思うのだー」
牢獄……に捕まえるのにはあまりにもボロボロであった黒武者は、今対策部の構える医療監獄に居る。
見舞いに来た鈴生・ナナキは、ボソリとそうぼやいた黒武者に向かって首を傾げた。
「……そうだな。お前なりに言うと、そうなるか。……お前はどうだ?」
鷹奈部はそうたずねられて、視線を落とす。お互い、死地を見失ったようなものだ。
「ひとつ――お前に生きる目的を持たせるとするのならば。アナグラの闇は、お前達が思っているより、ずっと深い」
「……それは、どういう意味だ?」
「アナグラへの人さらいが、どういう意味を持っているのか……知らないのか? ――アナグラの、奥の奥では――」
その言葉の続きに、鷹奈部は思わず歯を食いしばった。
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捕縛した黒武者は、頑なに他の四天王の戦闘情報を漏らすことはなかったが、『彼本人のひっかかり』として重大な証言を得られた。
――アナグラの、奥の奥では――さらわれた人々が奴隷のように働かされている。
彼の話によると人造のウロを作ったり、コントロール用の道具の作成などが行われているらしい。
黒武者自身も兵役では良い体験をしなかったがためにこればかりには苦言を呈していたが、『必要事項』として切り捨てられたそうだ。
「――……この時代に『奴隷』、か」
匙は眉間に皺をよせながらぼやき、それから働いてくれたフクロウ達に礼を言う。
それから、パン! と手を叩いて、笑顔を作ってみせた。
「黒武者の回復から証言をさらに得たいし、次の作戦は年明けになるだろうね! ――それまでもトラブルは起きるだろう! 英気を養っておくれ!」
結果:🔵69個! オーバーキル達成、貴重な証言が得られました!