敵の姿・二
「それでは、次の標的を決めるとしよう」
匙・当適はそう言うと、黒板に名前を書き記していく。次いでに、写真も。人相はいずれも暗闇の中で撮られたもの故に、なかなかどうしてはっきりと見ることはできないが、それでも相対した者は少なくはないだろう。
「儀間鷲・誉麗、虎屋・獅鉛、軒・ミヂカ……いずれも黒武者ほどではない……とは願いたいけど、敵対するなら厄介な相手だ。儀間鷲の奇怪絡繰は純粋に火力が高いし、虎屋と軒については民間人を盾にする可能性がある。……どのみち楽観視はしてはいけないね」
大人しく捕縛されてくれればいいんだけど、そういうわけにもいかないしなぁ、と肩を落とす。
「いずれにしろ、黒武者が落とされてからも各々の活動はずっと続けている。これは看過できないから、捕縛作戦の方に向かうとするよ」
それじゃあ、調査の方を頼もう。策の方はこちらでも考えておくけれども、なにか案があれば受け付ける――匙はそう言うと、真剣な眼差しをフクロウへと向けた。
「……まだまだ国粋革新会には謎が多い。――特に気になってる点がひとつあってね」
人攫いの報告が上がっているが、これは果たしてどこへ向かっているのだろうか――? 未だわからないことは多い、匙は新年早々にこんなこと言ってごめんね、と視線を落とす。実際に、匙の言葉通りな人攫いの話については謎が多かった、軒がその手引をしているというが、そこから戻ってきた者は居ない。かといってアナグラで著しく死者が見つかったという話も聞かない。……ウロに食われてしまったという可能性は否定しきれないが。
「……希望を見出すのならば、何等かのかたちで拘束されているとか……だね」
都合が良いかもしれないけれども、それが一番だと願って。今はただ、この暗闇の中を少しの灯りで進む他ない。
「ともあれ、仕事を頑張ってもらおう! ……以前よりも警戒しているかもしれないけど、アナグラの中じゃあお互い派手に暴れられない。……対処法となってしまうが……どうか」
よろしく頼む、そう言って口を引き結んだ。