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美しい死なんてない

「さて、作戦行動としてフクロウの諸君には探りを入れていただいた。どの『四天王』から倒していくか。……結果としては――」
 ほとんど結果としては調べが拮抗しているかたちとなっているが、探りを一番入れられて、危険性が高いと判断されたのは​黒武者・徹となった。
「……わからないことが多い彼だけどね、決定的に今回難易度を跳ね上げているのは、『生きて逮捕が難しい人間』だということだ」
 匙・当適は腕を組み唸る。
「自爆的行動を取る人間だからね……周りを巻き込んで大被害! ……だけは避けたいところ」
 勿論警察組織としては『生きて逮捕』をしたいしね! と続ける。
「一番の課題でありますな。自害を求める人間の生存確保と逮捕、これは苦労いたしましょう」
 ハラナキも難しい顔でいた。自分は異能力を使えませんし、と厳しい面持ちでいる。
「ともあれ! 他の『四天王』の警護をしている性質上、合流される前に倒したいという気持ちは理解できる! また、ここは法治国家だ。アナグラの中だろうとそれは適用させる。 ……よって、​『黒武者・徹の生存確保』、及び『聞き込み』をしたい」
「しかし、その『聞き込み』もどれほど効果があるか――」
「ボクは分かるんだけどね、あの手合の人間は――」
 ハラナキはその眼を見た。匙の真剣な眼差しを。
「――こちらの信念をぶつけるべきだ。言ってしまえば、死ぬために惰性で生きている人間に、こちらがどれほどこの戦後の混乱の中を生きていたいのか。破滅願望と生存本能の対決みたいなものだよ、これは」



「よーっす、黒武者の旦那」
 ひょ、と顔を覗かせた、一見少年に見える記者は、黒武者の前でニシシと笑ってみせた。
「おっぱじまるみたいですよ、アンタを狩る戦いが」
「……追い立てられるのならば、無様に負けないだけさ」
「ふーん。私には分かりかねますねぇ」
「何が」
「死にたいのならばこの場でさっさと腹を堂々と斬って死ねばよろしい! ……女々しいんですよ」
「は、お前だって死にぞこないだろう」
 そう言われた若い記者は、べえ、と舌を出した。
「……では、その死にぞこないに、せいぜい笑われないようにしてくださーい」
 ひら、と手を振る記者は、自嘲的な笑みを浮かべていた。
 


「……武田・直(たけだ・なおし)?」
「そ、最近アナグラに入ってる記者のこと」
 それはお前も一緒じゃないか――と、突っ込まれた巻端・磯路は、アレと一緒にしないでくれと唇を尖らせた。
「アレは狂ってるんだよ、話のネタさえもらえりゃなんでもいいんだから」
「……ネタ取りに殺されかけたみたいな話、聞いたことあるな、ソイツ……」
「うわー、ただでさえ対策部が黒武者指名手配するんだから、ややこしいことにならないといいんだけどな……」
 巻端はそう言いながら頭を抱える。自分も踏み込みつつあるこの問題、サテどう転ぶか?

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